話題の3Dプリンター銃の規制について考えてみる。

現在、TVやネットで3Dプリンターの銃問題が話題になってます。
5月の報道から、Googleでの「3Dプリンター」のワード検索数は前月の8倍以上!
f:id:osic:20140514194700p:plain 勿論、3Dプリンターの銃の製造者が逮捕されたニュースが起因になります。 3Dプリンターブームのなか、こういった形で話題になることは、個人的にはあまり喜ばしくはありません。   前回の記事では、3Dプリンターで銃を作った人が逮捕された概要について簡単に記述しました。 >>3Dプリンターで銃を自作した人が逮捕された。 – はましょうのブログ!   今回は、本問題の背景や考察を混ぜてつつ書いてみます。   前回の記事でも述べましたが、3Dプリンターの銃製造問題は、決して一過性の話題でありません。誕生時から懸念視されていたことが、遂に国内で逮捕者が出て、今まで予測されていた問題として顕在化されたものだと思います。 行政や法的な問題も絡むので、一概には結論を断言できませんが、事実や証言に基づいて、できるだけ中庸的な立場で自身の考えを伝えていきたいと思います。      

1)現時点、予期される問題点

 

1-1.検問を通過できる

本問題で特に重要視されてる部分ですが、樹脂で製作された銃は空港の金属探知機には引っかかりません。まぁ樹脂ですから。  

1-2.データの入手が簡単

3Dプリンターは、モノの流通方法が大きく異なります。 原則、モノをデジタル(情報)としてデータ化し、ネットを介して流通します。なので、物理的にモノを運ぶというプロセスは省略化されます。 今回も、銃の設計図は海外サイトからダウンロードされました。今までモノは物理的に運ばれるため、麻薬や銃など違法のものを海外に運ぶことは厳重に取り締まる事が出来ました。 しかし3Dプリンターは、ネット上でデータを介してモノ(情報)を交換するため、規制をかけるのが困難です。 例えば、TSUTAYAでDVDを万引きすることより、YouTube海賊版の動画を拾う方が遥かに容易なものだとイメージしてください。 また、日本で3Dデータの共有サイトを過度に規制したところで、規制がゆるゆるな海外のサイトからアクセスすればデータは一発で手に入れますす。 なので、現時点では、3Dプリンターのハード自体の普及を抑えるという苦肉の策しかできません。(もしくは、銃刀法違反を厳しくするか) それは、個人的には、『オレオレ詐欺が流行ってるから電話を使用禁止する』くらいナンセンスな話だと思えますが。  

1-3.銃で補足の用品を作るのも楽チン

3Dプリンターで、既存の銃のパーツや部品を製造するケースも有ります。武器の部品製造を助長する働きも考えられます。 f:id:osic:20140512145020j:plain    

 2)正しい理解

 

2-1)実弾は作れない。

結論は、3Dプリンターで実弾の製造はできません。 実弾に対しては、以下のようなニュースが有ります。 3Dプリンター拳銃、実弾も「造れた」 – 社会ニュース : nikkansports.com 上記のニュースタイトルだけを見れば、銃弾を作成することは可能だと思いますが、よく見ると以下の様なコメントがあります。  

居村容疑者は実弾について「ただし火薬を入手する必要がある」とも話し、実際に実弾を造った痕跡はなかった。

  3Dプリンターだけでは実弾の製造はできません。 弾丸には、正確に発火する雷管というものが必要で、雷管を3Dプリンターで製造するのは不可能です。 銃の構造上、ボディをプラスチックで外を作れば銃が発射されるものではありません。それが出来れば、プラモデルやエアガンを改良すれば銃になります。  つまり、ボディを作ることは出来ても、実際に使用することができないのです。  

2-2.検問の際に実弾は引っかかる。

1-1)の問題に対する反論ですが、銃自体を持ち込めても実弾は検問を通過できないため、結局検問には入ることは出来ません。1-1のロジックは成り立たない気がします。少し考えれば分かることなのですが。   2-3.そもそもクオリティが低い。  以下の動画で実験の様子が見られますが、家庭用3Dプリンターで製作された銃は飽くまで性能としてのレベルは低く、暴発する恐れがあります。   NSW Police Commissioner warns of dangers of 3D …  また1-3の問題ですが、銃の補助的に製作できるようになりますが、日本には銃が買えないので、意味はありません。  

3)海外視点の考察

 

3-1.銃の歴史

少し蛇足になりますが、銃の歴史について分かりやすく纏められた動画です。3分程度の長さで内容もコミカルなものなのでサクッと見られます! 銃社会アメリカの歴史 – YouTube   勿論、アメリカは日本よりも断然銃社会です。日本では銃というのは暴力として扱われますが、海外では自己防衛という認識です。 日本で銃が普及すれば犯罪が増えるかも?というイメージですが、動画を見ても分かる通り、アメリカ人が銃を持ってるのは歴史的なものであり、外的要因が働かない限りは特に問題ではないと考えます。(いきなり外国に制圧される自体になれば、話は別ですが)    

3-2.設計者からのコメント

本事件の銃の設計図を公開したコーディ・ウィルソンさんの居村容疑者に対するコメントです。  

「彼は作業を公の場で、疑いや恐れをなしに行ってきた。創造的で大胆な素質ゆえに迫害され、災難にさらされるのは、従順で凡庸な社会の罪深さを示すものだ」との声明を発表した。

決して居村容疑者を養護する考えではありませんが、彼はデータを隠すことなく公開し作業を進めていました。 コーディ・ウィルソンさんは、その考えや意図を汲み取り奨励したのでしょう。 f:id:osic:20140512050328j:plain  

3-3.(おまけ)

 

流石、自由の国アメリカ。ポジティブすぎます。

4)個人的な考察

4-1.武器なんてどこにでも手に入る

3Dプリンターは犯罪者を助長するものではないと考えます。そもそも武力というのは、そこら中に手に入るからです。

12 GAUGE ZIP GUN HOMEMADE SHOTGUN PIPE …

こちらは、身の回りである鉄鋼機材で作られたショットガンになります。鉄材や溶接機があれば、銃に準ずる武器は誰でも作れます。

むしろ3Dプリンターで、耐熱性の低い樹脂の銃を作るのは、少し非効率だと考えます。

今回の事件で、逮捕者は出ましたが実際に被害者はいません。
容疑者は、好奇心から銃を製造しましたが、本当に犯罪目的で使う人が3Dプリンターを活用するというのには些か疑問に感じます。

 

4-2.不確実性なものは騒がれる

昔、winnyでのデータ流失事件が話題になりましたが、新しいテクノロジーを取り入れる際には様々な弊害が推測されます。
弊害を改善しつつ取り組むのか、当時の日本は、そもそもWinnyのシステムを導入をしないという結論に至りました。

意外とこういうケースは多く、浅間山事件の対応にも似てます。

不確実なものほど、あらゆるリスクや事態を考え大げさに騒ぎます。日本はテクノロジーに関して鎖国文化で、対応が少し極端だとも思えます。    

4-3.テクノロジーの発展の際の弊害

僕がこの事件を見た際、はじめに想起したのはソーシャルゲームでした。 それは、2,3年前のソシャゲーブームで、GREEやモバゲーなどのSNSでの出会い系や詐欺が問題になっていました。ヤクザがSNSに参入してきているという内容の記事も流れていました。 語弊のないように言いますが、勿論ソシャゲー自体は出会い系や詐欺を斡旋するサービスではありません。元々出会い系や詐欺を働いてた会社が、お金の大きい市場に場所を移動しているだけです。 いつの時代も、お金のある場所や便利な道具を悪用する人が現れます。しかし社会では、根本的な問題を無視され、飽くまで場所や道具の方が問題視されます。 最近だと、LINEでの未成年者の規制が記憶に新しいと思います。 問題なのは、道具よりも使い手にあります。    

3Dプリンターが流行れば、犯罪者が3Dプリンターを活用したケースは多くなるかもしれませんが、それは決して犯罪者の母数を増やす因果性はありません。

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4-2の補足になりますが、僕がいつも勿体ないなーっと思うのは、どんな優れた技術力でも法的リスクや国策により発展が遅くなるケースが多々あることです。

昔ネットで、「YouTubeを思いつく→著作権違反。Facebookを思いつく→個人情報の漏洩。」みたいなポストを見ました。
今のグローバル社会では、国同士での技術力に差はなくなってきてます。

テクノロジーの進展で重要とされるのは、技術力でもなく、その国のバックボーンかもしれません。

最後に

今回、長々と書き連ねたのは、「3Dプリンターで銃を作れるけど規制は大丈夫なの」というニュースよりも、どうして新しいものが日本で流行らないのか?という、本事件よりも大きな問題提起がありました。

一度なんかよくわからない事件があったからって、何でも規制するのは臭いものにフタの理論で、非常に短絡的な考えだと思います。
できるだけ、新しいものを恐れず、拒まずに、寛容と受け入れていただきたいです。

日本では今回の騒動は大きく扱われていますが、海外だと3Dプリンターの普及によるメリットを十分に加味し受け入れています。

今回の記事では、私的な意見が出まくりましたが、大筋の内容は話せたと思います。
今後共、宜しくお願い致します。

以下、ネットでの反応。

 

 

 

 

ネットで、「3Dプリンターで銃を作った」という書き込みがありました、こういうブラックジョークは好きです。

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株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。


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株式会社メルタの代表。 1991年生まれ。高校・大学とボクシングのサンドバックに打ち込み、新卒で入ったベンチャーが半年で倒産し、未経験の3Dプリンター業界で起業。 創業当初は「3人の株式会社」という社名にして怒られていました。目新しいサービスが好きです。