「思考に枠をつくるな」久米原 勝/株式会社アイジェット【後編】

3Dプリンター事業者に話を聞こうシリーズ

3Dプリンター事業者専用のコワーキングオフィス「STL」にて、業界人に話を聞こうシリーズ。久米原 勝さんの取材記事の後半になります。

>>前編はこちら

3dnews.3day-printer.com

前回に引き続き、お話をお伺いします。

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会社のテーマについて

X人:会社の今後の方向性についてお聞かせください。

久米原:3Dプリント事業を核として進んできていますが、その枠にとらわれず違う分野にも進んでいければと考えています。

国内の同業他社を見渡してみると、ほとんどの会社が本業と言える事業があって、あくまで新事業として3Dプリント事業をやってるケースなどが多いです。

しかし、私たちは逆で、3Dプリント事業を軸にして他の分野を模索していければと考えています。3Dデータを使って新しい価値を生み出すことが会社のテーマなので、極端な話ですが私達が3Dプリントをしなくてもよいと考えています。

X人:やりたいことは3Dプリントだけじゃないんですね。

久米原:会社のメンバーに意識させているのは、“思考に枠をつくるな”ということですね。最初から全てを社内でやれなくてもいいし、自前の設備を使用しなくてもいいからユーザー目線で新しい企画をつくろうと社内に言い聞かせています。

例えば今企画中の新プロジェクトも3Dプリントのサービスビューローとしてのものでは無く、3Dプリント関連ではありますが全く違う視点のサービスになります。

X人:なるほど。目の前に石膏のプリンターがあると、その機材を活用することを考えてしまいますもんね。

久米原:それは思考停止になるんですよ。目の前の機材を稼働させることしか考えていないと、機材を絡めるように無理やり企画をひねり出すカタチになるから。企画中のプロジェクトも、「一旦3Dプリンターから離れようぜ!」っていうので考えました。

X人:それはいいですね。最近ですと、Pepperの着せ替えサービスも出しましたが。

久米原:あのサービスは、弊社の考えをよく表しています。今まで白1色だったPepperに自由なカラーリングデザインを選択できるようにし、新しい価値を生み出しました。しかも3Dプリンターを全然使っていない!笑

 

会社の社風について

X人:前回でもお伺いしたんですが、もう一度会社の内部についてお聞かせください。

久米原:“思考に枠をつくるな”と言っているとおり、かなり自由です。

X人: 採用基準ってあるんですか?

久米原:全く無いです。バックグラウンドも学歴も問わずです。

X人:断ったりするんですか?

久米原:それは勿論かなりあります。採用活動では結構断ったりしますね。断る際はフィーリングによるものが大きいです。

X人:そんなに難しいとは。。ちなみに、新卒で入る人はどんなタイプの方ですか?

久米原:少し例を挙げると、九州大の工学部でロボコンに出ていた人がいます。その際は募集は全くしていなかったんですが、俺のブログを見て、いきなり会社に電話して「面接してください!」って言ってきたのね。

X人:凄いですね!

久米原:とにかく行動力がある。

X人:もし娘がいて、娘が連れてくる男性はどういった基準にしますか?

久米原:難しいなー。本当はベンチャースピリッツがあって、古い常識や規制と闘って壁をぶち破っていくような精神力と不屈の精神を持った男とか、スポーツ選手とか芸術家とかミュージシャンの方が好きなんだけど、娘の夫となると逆に公務員、官僚とかの方がいいな。笑

X人:意外ですね。尖っている人のほうが良いかと思ってました。

久米原:社長業とか苦しいし本当大変だから、娘の旦那となると少ししんどい! あと、今は大企業でも安泰じゃなくなってきているから、やはり最強なのは公務員じゃない?できれば官僚とかのレベルがいいね。笑

X人:吉田さんは、娘さんの旦那の希望はありますか?

吉田:特にないな!

 

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好きなサービスについて

X人:3D関係で、好きなサービスってありますか?

久米原:以前からリスペクトしているのは、マテリアライズさんのMGXです。このサービスは尖っててカッコいいです。

X人:MGXは、むかし記事で見ました。等身大のインテリアグッズを3Dプリンターで作るサービスですね。

久米原:そう。3Dプリンターで作ったテーブルが三桁万円とかで平気で売ってるのね! そのスタンスがめっちゃカッコいいなーと思っている。個人的に家とか家具とか大物を作ることに憧れがあるかも。

それは、今まで作ってきたサービスのコンプレックスからきていて、今まで家具とか楽器とか大きなオブジェクトを作りたいという問い合わせが何度もあったけど、そのたびに「3Dプリントは0.1mmずつ積層するから、造形だけでも大変な時間がかかるので金額もかなり高額になるし少し難しいですね」と説明している自分が嫌だった。

本当は家具とか作れたら面白いし、デザインの自由度もあるから、凄いやりたいよね!

MGXのインテリア

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画像出典:Lamp Quin by Materialise MGX by design hunting

アイジェット社の受付にあるインテリア(マテリアライズさんのMGXシリーズ)

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業界の課題

X人:久米原さんが考える業界の課題点ってなんですか?

久米原:そもそも「業界」という言葉があまり好きじゃなくて(笑)

X人:おっと、失礼しました。

久米原:以前いた業界の頃から同業者の集まりとかが少し苦手で、「協同組合」みたいな集まりに参加していましたけど、業界内で手の内を探り合ってるだけで、前に進んでるという感じがあまりしなかった。

みんな業界から飛び出すという視点がなく、なんか思考が固まっているんだよね。業界って言葉がある時点で、宇宙事業します!ロボットやります!人口知能つくる!って人は現れにくいと思う。自分で自分をカテゴライズした時点で、思考停止している気がするな。多角的に多くのビジネスに進出していくDMMさんとか、めちゃリスペクトしています。

オススメの機種

X人:アイジェット社は、産業用3Dプリンターを国内でも最多クラスで保有されていますが、その中でも一押しの機種とかありますか?

久米原:ウチで扱っているのだと、最近リリースしたフルカラー樹脂の素材は面白いです。かなり細かな色合いを彩度高く表現できたり、細い形状でも壊れにくいというのは次世代のフルカラーの3Dプリントですね。2.0です。

X人:あれは大きな反響がありましたね! 持っていない機種ですといかがでしょう。

久米原:実はFDM方式の3Dプリンターに未来を感じています。

X人:意外ですね!(笑)家庭用の3Dプリンターですか?

久米原:そうです。家庭用3DプリンターのFDMはポテンシャルが高いと思っていて、まず素材の価格を下げやすいことと、年々造形のクオリティも高くなってきている。あとプリンターの構造自体もイジりようがある。

X人:そうなんですね。最後に、個人資産で5,000億円あったら何に使いますか?

久米原:自分はそんなお金があっても上手く使えないので、きちんと社会に還元できる人に渡します。

X人:100万円ですとどうでしょう?

久米原:バイクを買い換えるとか?笑

インタビューまとめ

・社風はかなり自由。

・3Dプリンターを試作という使い方だけではなく、今までには無かった面白い使い方を提案したい。

・業界という言葉はあまり好きじゃない。

・娘の旦那は公務員がいい。

・家庭用3DプリンターのFDMはポテンシャルが高い。

最後に

数年間3Dプリンターに関わる人が放つ言葉には、ナイロン樹脂以上の固い意思を感じました。

改めて、久米原さんのそんな素晴らしい話が聞ける場所は、浜松町の「STL」というコワーキングスペースになります。

引き続き会員も募集しているので、見学などお気軽にお越しください。

fabcross.jp


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株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。


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株式会社メルタの代表。 1991年生まれ。高校・大学とボクシングのサンドバックに打ち込み、新卒で入ったベンチャーが半年で倒産し、未経験の3Dプリンター業界で起業。 創業当初は「3人の株式会社」という社名にして怒られていました。目新しいサービスが好きです。