ハイプサイクルから読み取る、今後の3Dプリンター市場について

ハイプサイクルとは?

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ハイプサイクルは、米調査ガードナーが発表しているレポートになります。

先進テクノロジーの成長曲線を示したものであり、技術への感情(興奮や失望)と社会への浸透との関係は強いという考えです。

技術の期待度、成熟度、社会への適用度から、今の技術段階について読み取ることができます。企業がテクノロジーの導入を判断したり、新事業を策定する上で、タイミングを図るのに非常に大事な指標になっています。

※ハイプサイクル例

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ハイプサイクルの一連の流れ。

黎明期(技術の誕生)から始まり→過剰にメディアが取り上げ話題→まだ技術が追いついてないので消費者が冷め衰退→徐々に正しい使い方がされる→本格的な導入がされる

どの技術も似たような成長のロードマップを辿っていく、という考えです。

各3Dプリンター市場ごとのハイプサイクル

まず、3Dプリンターの現状を読み解く上で、市場自体を細かく分類することが重要になります。

3D関連だと、大きく分けて、産業用・家庭用・3Dスキャナー・バイオプリンティングの4つのカテゴリに分類されていきます。

よく、産業用と家庭用のプリンターは一緒に捉えられがちですが、大きく異なってきます。ラーメンで言うと、つけ麺とまぜそばくらい違ってきますので、別々に考察していきます。

コンシューマー3Dプリンティングは過度のピークを過ぎた

以前は、ヤマダ電機や家電量販店の店頭に家庭用3Dプリンターが並んでいましたが、最近は少し姿が減ったかもしれません。一般消費者が3Dモデルを作られるスキルが追いついてなく、機械自体がただの箱モノになってる現状が見られます。

2Dプリンターの年賀状のように、消費者が使いたくなるようなキラーコンテンツが出てくれば使う人が増えてくるのではないでしょうか?家庭用プリンターの普及にあたり、3Dデータとモデルソフトの充実化が鍵になると考えます。

ガートナーのレポートによると、2020~2025年の間に主流になると言われております。

ハイエンド3Dプリンティングは啓蒙期と安定期の間

産業用プリンターは、幻滅期を過ぎて安定期へと移行しております。

企業の試作品・最終製品として徐々に利活用されてきています。例えば、以前は試作品のプレゼンにあたり、3D画面のみでの確認や、粘土を使って模型を作成していたみたいですが、3Dプリントで試作品を早く作ったりしています。近年、経済合理性から3Dプリンターで模型を作る企業が増えてきているようです。

産業用の3Dプリントは、パーソナルに比べて少し早く2017~2020年の間に主流になると言われています。

3Dスキャンは安定期へ

コンシューマーとビジネスの両方で利用される3Dスキャン。

昨年(2014年)は、ハイプサイクルに入っていましたが、今年は姿を消しました。昨年のデータでは、3Dスキャンは安定期へ入ろうとしております。

産業用と同じく、2017~2020年の間に主流になります。

3Dバイオプリンティングは引き続き黎明期

3Dバイオプリンティングは、臓器や細胞組織を立体的に造形する技術です。

主に、医療の用途で使われております。技術の普及にあたり、手術の効率化・動物実験の数の減少を目的とされています。まだメディアやニュースなどでも目にする頻度は少なく、大きく一般化されていない現状です。個人的には、かなり関心のある分野です。

主流になるのは、2025年以降になるという見通しです。

Googleトレンドからみる3Dプリンターの検索数の傾向

Googleトレンドは、Googleが提供しているキーワード調査ツールです。

検索エンジンにて特定のキーワードがどれくらい調べられているかをグラフ化したものです。検索キーワードにはユーザーの関心度が現れる、ということで検索キーワードを使って、3Dプリンターの現状を考えていきたいと思います。

■ 3Dプリンター

こちらは、ユーザーが「3Dプリンター」と入力した数の時系列での推移になります。 (残念ながら、家庭用と産業用は数が少なく、分けることができませんでした) ディアゴスティーニとのコラボや和光が参入した時に、特に注目を集めています。また、素材のラインナップが増えてきたことも追い風になりました。   ■ 3Dスキャン

3Dスキャンは、2013~2015年で、ハンディースキャナーの低価格化や芸能人とのコラボなど、多くのニュースが出てきています。博物館や歴史遺産の保存などでも3Dスキャンのポテンシャルが話題となっています。

■ 3Dプリンター フィギュア(番外編)

キラーコンテンツであるフィギュアサービスは堅調です。 人物やペットなど多くのサービスが生まれてきております。  

まとめ:3Dプリンターってどうなるの?

ハイプサイクルを見る限り、3Dプリントは、企業の利用から始まり家庭用は後になると考えられます。また、バイオプリンティングに関しても、まだ医療現場での一般化は時間がかかりそうです。  

そもそも3Dプリンターって流行るの?

飽くまでハイプサイクルは、過去の事例から読み取れる予測レポートであり、全ての技術がメジャーになるとは限りません。 特に、幻滅期の時期は、一過性の衰退なのか長期的な衰退なのかを判断することは困難になります。ブームが過ぎた後、長期的な衰退をしていき埋もれていった技術も沢山あります。 ※テレビ電話はキャズムを超えずに、大きく普及されなかった。下記は、テレビ電話のグーグルトレンド検索。  

3Dプリンターが飛躍する上で、社会に必要不可欠かどうか?という観点も重要になります。

革新的な技術でも、実際にビジネスとして使われなければ意味がありません(VRも最近まで息を潜めていました)。ユーザーへの普及にあたり、具体的な活用シーンを明確に提示していくことが大事になってきます。

例えば、3Dプリンター先進国では、以下の様な分野で3Dプリンターが活躍しています。

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・発展途上の国では、道路インフラが不十分なため、モノを輸送するのに大きなコストがかかる。村に1台プリンターがあると、配送コストを大きく削減できる。

・米国でDIYが活発な理由は、部屋が馬鹿広くて、庭のある家が多い。そのため自然と家のモノを自分で作る機会が多くなる。

・家具・家電のアフターサポートのサービスが充実でない地域では、部品の修理や購入頻度が多い。海外は日本と比べて100円ショップが少ないため、ちょっとしたものを購入する場合は、作ったほうが早い。

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というように、3Dプリンターが大きな影響力を持つには、 「何に使えるの?」を示唆する必要があります。

日本はモノが溢れてる環境ですので、自分で積極的にモノを作る必要性はありません。

上記の理由から、産業用のプリンターはビジネスとして活路はありますが、家庭用は伸び悩むかもしれません。同じように、一家に一台3Dプリンターを持つ時代はまだまだ先と言われています。

友達の「行けたら行くわー」というノリで、もしかしたらブームがこない可能性もあります。

急ぐ必要はありませんが、3Dプリンターの普及に対して、市場全体で考えていく時期がきていると思います。

マクロ的な視点から予測するハイプサイクルと、ユーザーの意思を表す検索キーワード。

今回はこちらの情報を元に、今のユーザーはどう感じているのか書いてみました。既に3Dプリンタービジネスを行っている人、始めようとしている人に対してお役に立って頂ければと幸いです。

まだまだ先の見えない業界ですが、上手く盛り上がっていければと思います。

ではでは!

※新技術の成長を考察する上で、こちらの本が参考になりました。

www.amazon.co.jp

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■参考サイト

ガートナー | プレス・リリース |ガートナー、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2015年」を発表


画像の説明文 <運営元情報>
株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。


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株式会社メルタの代表。 1991年生まれ。高校・大学とボクシングのサンドバックに打ち込み、新卒で入ったベンチャーが半年で倒産し、未経験の3Dプリンター業界で起業。 創業当初は「3人の株式会社」という社名にして怒られていました。目新しいサービスが好きです。