ピザ屋で世界を目指していた男が3D事業に転身/ケイズデザインラボ・兼松 将堂

3Dプリンター事業者に話を聞こうシリーズ

本インタビュー企画は、3Dプリンター事業者の考えを真面目半分、与太半分に聞くものです。第8回は、”3Dプリンター業界のしみけん” と呼ばれている株式会社ケイズデザインラボの兼松さんにお話を聞いてみます。

※PV数を恣意的に上げるために美少女のフリー画像をアイキャッチに設定していますが、本記事には1mmも登場しませんのであしからず。

兼松 将堂 プロフィール

ケイズデザインラボの戸締り役。大阪外国語大学(現:大阪大学)、ピザ屋、大手2D印刷会社などを経て、3Dモデリングで有名なケイズデザインラボ社に入社。3Dスキャン、3Dプリンタ案件とか超強い。家庭用品から軍需産業品まで。傷心中。

ピザ屋で世界を目指していた男が3D事業に転身

濱中:まずは兼松さんの経歴についてお聞かせください。

兼松:もともとは女子高の英語の先生になりたかったのですが、いろいろあって宅配ピザ屋の「ドミノピザ」に入社しました。

濱中:ドミノピザ!?初めて聞く経歴ですね。

兼松:むかし、ドミノピザのピザの早づくりコンテストがありまして、そこでアジア圏で3位を取りました。その後、現場で店舗設計として3Dデータを扱い始めたのが3Dキャリアの始まりですね。

濱中:ドミノピザで3Dの仕事って意外です。

兼松:実はドミノピザは3Dに関して昔から積極的ですよ。そこからは3Dの知見を生かして、2D印刷会社で3D印刷サービスの立ち上げに参画しました。その後はいろいろあってケイズ社からお誘いがあり、、という流れです。

濱中:ちなみに、兼松さんが好きなピザはなんですか?

兼松:ドミノデラックスですね。

濱中:欲望がすごい。

「デラックスピザ どみのぴざ」の画像検索結果
画像参照元:https://bit.ly/2JK5LlJ

3Dデータ制作の領域は儲かる。3Dプリントまですると儲からない。

濱中:まず、ざっくりと3D関連の市場はどうでしょう?

兼松:排斥したいわけではありませんが、 ぶっちゃけ3Dプリンターは儲からないんじゃないですか?

濱中:おー。

兼松:日本では構造的に儲かりにくい仕組みなのかなと思います。なので自分からすると、なんで3Dayプリンター(株式会社メルタ)さんが事業を伸ばせているのかが分からないですね。3日で出せないのに。

濱中:3日で出せています。

兼松:3Dプリントは儲からないと思いますが、3DCGの事業は儲かりますよ。

濱中:なんと!

兼松:ぶっちゃけ、3Dデータを作れる企業はアグラかいてても儲かります。現場は泥沼な場面が多いですけど。

濱中:ふええ。3Dプリントが儲からない理由ってなんなんでしょうか?

兼松:単純に材料が高いからです。あとは質ですね。各社ともフルカラー機種など業務用機器のクオリティは上がってきましたが、一般量産品と比べて全然クオリティや質感が追いついていないし壊れやすい。なので、日本では試作市場で止まっている印象ですね。

濱中:なるほどです。

兼松:3Dプリントで儲かりそうな例として、大量生産のジャンルはありそうですね。たとえばキーボードの中にある配線を止めるための固定具をつくったりとか。

スマホケースや人物スキャンとか分かりやすいジャンルは正直儲からないです。クオリティも価格も合わないし、依頼も単発なのが弱点です。こだわる人は手にもって触れたときの質感にもこだわるでしょう? 3Dプリントのクオリティはもう少し、、というかまだまだです。

濱中:なるほどです。あと兼松さんはよく海外出張に行っているイメージです。海外市場と比較するとどうでしょう?

兼松:3Dプリンターの良い機種はだいたい海外からきますよね。海外と比べると。日本で販売されている材料が向こうでは1/5くらいの価格で売られていたりするので、まるで話にならないです。

3Dデータの利用シーンとして、CM・映画・幽体離脱など

濱中:逆に3Dデータが儲かる理由としてはなにが大きいですか?

兼松:単純に既に大きな市場があるんですね。たとえば、3Dでスキャンしたモデルに骨を入れて動かして映像で使いたいとか、CM、映画、プロモーションビデオなどの大きな案件がコンスタントにあります。しかもかなり額が大きい。

濱中:そうなんですね。たしかに3Dプリントは試作以外だと利用シーンが限られますもんね。

兼松:その派生で、CG用に使えるハイクオリティ用の3Dスキャンスタジオが増えています。逆に3Dプリント用の3Dスキャンは減っているイメージです。

濱中:ほえー。

濱中:具体的にケイズデザインラボでは、どのような案件を受けているんですか?

兼松:うーん。最近だと幽体離脱とか……。

濱中:幽体離脱!?

兼松:とある有名なドラマ作品のなかで人物を幽体離脱させるシーンがありますが、実は中身でガンガン3Dデータを使っています。実際に生身の人間にメイクして幽体離脱っぽく撮影までをすると、吊り下げセットの制作や事故用の保険など含めてめちゃくちゃお金がかかります! 事務所からしても俳優やタレントを空から吊るして撮影するのはケガのリスクもあるので嫌がりますし。

ですが、人物の3Dデータを元にすれば、幽体離脱のシーンをそれっぽくつくるのができます。事務所からすると100万円の費用感でも全然割りに合うんですね。

3Dデータを極めると「光」にたどり着く

濱中:今後3Dデータ関連で成長しそうな事業ってなんですか。 スキャナー販売やアニメーション技術などがある気がしますが。

兼松:CGと思わせないハイクオリティなデータには大きなポテンシャルがあると思っていて、その時に光をきちんと操れる会社は強いんじゃないですかね。

濱中:光??

兼松:たとえば、人物のモデルとか光の当て具合で一気に生き物っぽく見えます。皮膚の下にある血管や表情によってかわるわずかな顔の筋肉の凹凸だったり。最後の決め手は光がとても重要になるんですね。

ケイズデザインが出している人物の3Dプリントモデル。超精巧なクオリティで、シワ、まつげ、瞳を表現している。これも実は光を死ぬほど研究しているそうな。

濱中:光を気にしたことは一回もなかったですね。

兼松:精巧なモデルを考えると、最後に「光」の重要性にたどり着きますよ。フルカラー造形の方法もいくつかの機種や樹脂などがありますが、最上のクオリティだと某機種を使用するようにしております。価格も一気に上がりますが。
表面色の再現だけじゃなくてあえて光を透過させる樹脂を選んだりします。。まぁここからは企業秘密です。

濱中:なるほどです。そういえば、どうしてパソコンにステッカー貼っているんでしょう?

兼松:撮影現場あるあるなんで、撮影時にアップルのロゴの光がジャマになるんですよね。アップルには毎年お布施するくらいの信者ですけど。

濱中:ここでも光を気にしているんですね。

撮影のライトが反射しないように、MacBookのロゴを隠すほど光は大事だそう

3Dモデリングの価格はどうやって決まる?

濱中:3Dモデリングに関して価格決めはどうですか?

兼松:CG業界と一緒で、その仕事に対して何日使うか?で価格を決めます。

濱中:WEBデザインと一緒ですね。

兼松:そうです。基本的に案件数でなく人日の計算で考えます。

濱中:システム開発会社みたいだ。

濱中:見積もり方法で、ポケモンの3Dモデリング案件ですとどうでしょう。「ミューツー」と「オムスター」の場合はどちらが高いでしょうか?

兼松:あまり変わらないですね。

濱中:ミュウツーはサイコキネシスが使えるのに?

兼松:いや、強さはあまり関係ありません。あくまで複雑かどうかです。

ポケモン界最強のミュウツーもオムナイトと同じ価格

兼松:ポケモン案件は受けたことはりませんが、近いモデルを転用できるかどうかは価格に左右されますね。他に、ビリリダマとマルマインとかを一緒に受けると安くなります。

濱中:たしかに似ている。

兼松:人物系は「似ている似ていない理論」があるので高くなりました。同じように、有名キャラや芸能人関係の仕事も少し割高になるかな〜。

エビワラーはすこし割高らしい

3Dプリントサービスのテーマは「価格設定」

濱中:一旦、3Dプリンターの話に戻しましょう。兼松さんの3Dプリンターブームの見解を教えてください。

兼松:国内の特徴としては、2Dの印刷会社が3Dプリントサービスを始めるケースが多いですかね。

濱中:たしかに。アイジェット社(現在DMMの子会社)の社長も元々は2D印刷出身でしたね。

兼松:おそらく価格決めの部分がやりやすかったんじゃないかなーと思います。

前職で3Dプリント事業を立ち上げる際に、アイジェットさんをかなりベンチマークしましたが、やはり長期的な事業計画に基づく価格設定が重要だと思いました。機械を減価償却をしながらも利益を上げていかなければいけないのは大変です。
価格計算式や単価を公開しない企業が多いなか、前職では価格を大っぴらに公開しました。そのおかげで後から参入した何社かに逆にベンチマークされましたね。

濱中:価格が決まっていない業界なので「価格設定」が大事になったんですね。

そうです。たとえるなら、1,000万円で機械と材料を買って何かサービスを提供する場合、通常のビジネスは材料の原価から20~30%の利益を乗せますが、3Dプリンターの場合ですと失敗がつきものなのでやり直しの費用も含めた価格設定を考えないといけません。保守などのコストも含めると、他ビジネスと比べて粗利はかなり低いと思います。 そう考えると、やっぱり事業が上手くいっている3Dプリントサービスは金額の決め方が上手いですね。

濱中:3Dプリントは価格決めが全てだと。

兼松:ちなみに、ピザの食材原価は20%前後ですよ!

濱中:ピザ低い!!

アナリストでなくワーカーとして活躍する

濱中:兼松さん自身の今後の話を教えてもらえないでしょうか?

兼松:3Dとかなんでもよくて、根本的には誰かの役に立ちたいのがありますね。サポートの意味では、3D技術はさまざまな場面で役に立つので良いかと思います。

何気に業界でのキャリアが長くなってきましたが、アナリストなんかになるよりもいつまでもワーカーとして現場第一主義としてやっていきたいなと。

濱中:今日の話を聞いて「ワーカー」の言葉はしっくりきました。

兼松:アナリストは分析する力や表現する力がありますが、この業界では知見を貯めているワーカーの方が必要だと感じます。自分に当てはまっているんじゃないかなと。

3Dプリンター自体も、流行らないかもしれないけどなくてはならないものになると思います。そのために大事なのは、分析ではなく長く続ける方かと思います。

3Dなのに、やっている内容がアナログなのが好き

濱中:なるほどです。しっくりきました。ワーカーとして3Dプリンターの仕事ではどの部分がハマりましたか?

兼松:基本的に仕事内容がアナログなんですよ。玩具やホビー関連の試作とかは分かりやすいかなと。依頼されたデータをもとに、これが本当に組み立てられたのがテストする必要があります。

大型ロボットフィギュアなどは、200から300パーツもの部品があるケースもあります。途中まではPCでCADソフトを使うのに、最後はパズルのような仕事になるんです。3Dはテクノロジー的なワードに反して、やっている内容がアナログなのが良いギャップです。

濱中:ありがとうございます。それでは最後に仕事をする上で、なにか金言的なのをお願いします。

アナログとデジタルは共存なくして共存なし。

濱中:いい言葉ですね。

兼松:最後に広報です。ぼくが毎月記事を書いているモデルグラフィックスを是非買ってくださいね。

濱中:ありがとうございます。

まとめ

・3Dプリントは儲かりにくいが、3Dモデリングは市場が大きい

・3Dプリントビジネスは価格設定に勝機あり

・3Dデータを極めると、「光」にたどり着く

・ピザ屋の話を最初に出したものの、あまりピザの話をしていない

・幽体離脱とかは3Dデータとの組み合わせが良い

・3Dの仕事は、名前の割りにアナログな部分が多い

以上です。

自分よりふた回りほど身体の大きな兼松さんでしたが、時折り悲しい顔を見せるのが印象的でした。あと、今回の記事では書けませんでしたが、アダルト関連の3Dプリンター案件はそこそこ多いらしいです。

アダルトの相談は兼松さんまでご連絡を。ではでは!

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株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。