ここ最近の3Dプリンター事情
2017年は早くも終盤。この1年間で、3Dプリンターは目まぐるしく進化したように感じます。
特に、個人的にいいなーと思った機種は「ダヴィンチ・カラー」「Form2」「ミマキのフルカラープリンター」です。
(他にも好きな機種はたくさんありますよ!と保険を掛けておきます)
ここ最近、3Dプリンターの話題がもてはやされなくなったように思えますが、実際のところ業界の勢いは活発になっているように感じます。
3つの機種の凄さ
ダヴィンチ・カラーにより、今までのフルカラー造形のネックであった価格の問題がかなり解消されました。いままで、10cmの人物模型で1万円前後していましたが、1~2千円程度で提供できます。
ミマキの3Dプリンターは、価格はやや上がりますが、既製品のフィギュアと同じくらい高精細なモデルをつくることができます。クオリティが断然いいし、壊れにくいので、高付加価値製品のものでも勝負できます。
あと、某有名漫画のPR用のキャラ製作としてミマキの3Dプリンターが使われたそうです。
アクリル系の樹脂なので既製品のフィギュアに近い肌触りにまで仕上がりました。クオリティ面での壁を突破したので「レアなモデルであれば高くても買う!」という人がいるようなジャンルに対してアプローチできるようになりました。
ちなみに、すこし前に売られた「紗倉まな」のフィギュアは25cmで1体20万円でした。 これも3Dプリンターだそうですよ。
▼紗倉まな(実際に販売されたフィギュアは刺激的すぎるので、よかったら検索してください)
(画像出典元:紗倉まな – Wikipedia)
Form2は素材費が安いので、個人でも依頼できる価格です。プリント後に手を加えるとそれなりの仕上がりになります。
実験的にハイエンドの機種と同じモデルを造形したのですが、クオリティにあまり差は感じませんでした。
▼Form2でつくった「3Dayプリンター コンテナ(オリジナル商品)」
先程紹介した機種をしようして、既にルアーやプラモデルのキッドといった領域で、多くのプロダクトがつくりだされています。
▼ダヴィンチ・カラーでつくられたルアー
(こちらの記事から画像を参照しました。記事の内容もおすすめです → 3Dプリンターとかいう箱)
従来のキラーコンテンツであった「アニメフィギュア」という枠を、すこし飛び越えた感がありますね。
個人的に、製品開発の障壁が下がり、新たな商品が生まれる魅力を感じるので、このような流れはとてもいいと思いますね。
試作ではなく販促品として
今まで、社内での形状確認のために使われていた3Dプリント物ですが、近い将来、家庭でも気軽に目にするような商品として活用されることになると考えられます。
そうなると、3Dプリント事業を行う上で、以下のスキルが重視されてきます。
- 梱包、パッケージのデザイン
- 取扱説明書の作成
- PL保険はどうするか
- コピーライティング
- 販売サイト
- 集客、広報
- 価格決め
- 特許の取得
3Dプリンターを使った「EncodeRing」という指輪の販売サービスがあるのですが、
こちらの会社は頻繁にパッケージデザインを変えたり、ソーシャルでの集客方法に力を入れたりしているそうです。
▼Encode Ring
このように、梱包を例にしても「ダンボールに造形物と梱包材を詰める」以上のことを考えないといけないと考えました。
試作分野においては、設計や加工といった製造工程が大事です。しかし、販売用途では、企画・集客・製造後の配送・フォローといった、前後の動きがとても重要になると考えます。
弊社でも、新しく入った女性デザイナーが「新しいサービスを売り出すのであれば、Instagramをやるべき!」と言うのを聞いて、ハッとしたり。
編集長の役割
むかしのメディア業界を例にしたいと思います。
WEBメディアが登場した時、雑誌編集者の価値は薄れていったそうです。
WEBメディアは1人の編集者で100人のWEBライターをクラウドソーシングで管理でき、記事を量産できる仕組みがありました。それに対して、属人的に1人の編集者で10人のライターを管理している雑誌は勝ちにくい構造でした。
相対的に価値が下がっていったのですね。
そのときに生き残る編集者は3つのタイプであると誰かが言ってました(もしかしたら言ってないかもしれません)
①読まれる文章に編集することに秀でていて、雑誌でもWEBでも良い作品がつくれる
②WEBメディアは無知だが、雑誌に関しては編集から広報まで幅広く担当できるスペシャリスト
③編集能力は普通だが、雑誌から電子書籍への移行についてコンサルができる「架け橋タイプ」
価格破壊というものは、多くの分野に影響を与えます。
プロダクトの制作過程
3Dプリンターに限らず、あらゆる分野でプロダクトの制作手法が変わってきていると感じます。
映画の本編が始まるまでのスキマ時間に対応するコンテンツをつくっている鷹の爪という会社があります。それから、SNSを中心に活躍する漫画家のかっぴーさん。
この二者に共通するのは、コンテンツを作り出す仕事をしているのか、プロモーションを行う仕事をしているのか、よく分からないということです。
▼鷹の爪は、「IP保有会社」という位置づけをしているそうです。
DLEという会社は、『秘密結社 鷹の爪』などのアニメ番組を制作してはいますが、いわゆる「アニメ制作会社ではない」というのが根本にあるんです。
極限まで言うと、IP(Intellectual Property)、いわゆる知的財産を生み出し、その価値を最大に広げるのが社の基本方針です。作り出したアニメやキャラを多方面で活用させるために、このような形になりました。
これは企画したキャラやアニメをストックし、様々な企業や自治体に「このキャラクターを使用してみるのはいかがですか」とご提案したり、キャラクター自体を自社でグッズ化やデジタルコンテンツ化して収益を得るということです。(引用:映画にメガネに車まで! なぜ【鷹の爪】を広告に起用するのか? 『生みの親』DLEの秘密に迫る(前編)|Nizista (ニジ★スタ) – オタクカルチャー専門WEBマガジン)
かっぴーさんもブランディングの仕事をしているのか、漫画執筆がメインなのか分かりません。今まで、漫画×広告×バズという分野は存在しなかったので、かっぴーさんの代わりは少ないといえます。
このように、コンテンツとプロモーションが一体になっていて作られていく、混沌(カオス)とも言える手法が成り立っています。
(さらに、この2つに通じるのはデッサンにあまり力を入れていな……ごにょごにょ)
▼かっぴーさんサントリー社の広告漫画 「家飲み奉行!女子野カガミ!」
小売店がメーカーになるという予測
もうすこし、事業者サイドの視点から書いていきます。(執筆時に台風で他にやることないという理由でダラダラと)
3Dプリンターの価格が下がれば、新しい会社が参入しやすくなると言えます。Form2やダ・ヴィンチColorは60万円前後という価格ですよ、社長!
3Dプリントは価格の比較がしやすく、月額モデルといった抱え込みが難しいモデルなので、顧客の移り変わりが早い業界と言えます。
(多くの3Dプリントサービスは、売上の半分が新規顧客という話もあったり)
機種本体や素材が安くなると、仕組み的に勝ちにくいポジションが出てきて、オセロゲームのようにプレイヤーが変わると思います。自社サービスの3Dayプリンターでも、新機種の発表により、ある素材の発注率が落ちたりする現象がよく見られます。
タイトル通り、3Dプリント物が最終製品として機能し、販促物としても優秀!というロジックが成り立てば、今後はロフトや伊勢丹などの小売店がプレイヤーになるかもしれません。小売店は売上のPOSデータがあるので、大枠として顧客ニーズや動向は読み取りやすいポジションだと感じます。
今年、銀座ロフトでは、レーザーカッターなどを使った半オーダーメイド製品を販売するサービスを開始しました。前はフィギュアやスマホケースくらいだったのですが、商品のラインナップも増えると、力の入れくらいも大きくなってきていますね。
先日、ドンキホーテが自社ブランド製品として、GOproのようなアクションカメラを発売しました。
ドンキ激安家電「GoPro」風カメラ登場 自撮り棒、防水ケースも完備で5000円 – KAI-YOU.net
他にも、コンビニが自社製品をつくりだすという流れなどは、とてもわかりやすいですね。
今後は多くの領域で、小売店・流通・比較サイトなどのサービス提供者がメイカーとして乗り出すになるのでは?というのが筆者の考えです。
悪い例ですが、むかしのネットの領域でもマーケ力が上手い人が情報商材をつくるような流れがありましたし。
なんだかんだ3Dプリンターはいいよね!ってオチ
すこし冗長的な記事になりました。
機種の成長スピード、つくれるデザインの自由度といった点で、やはり3Dプリンターはいいですよね!
ひとまず、自分たちがいる業界は「3Dプリント製品は価格が高い!」というハードルを1つ超えてきました。今後は、自分たちの発想を超えた新しいサービスが生まれることに期待しています。
おもしろいプロダクトをつくれるように、自分たちも頑張っていきます!
<運営元情報>
株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。