ファイナンス面から見る3Dプリンター業界について/朝倉雅文 カブク社

3Dプリンター事業者に話を聞こうシリーズ

本インタビュー企画は、3Dプリンター事業者の考えを真面目半分、与太半分に聞くものです。第7回は、”3Dプリンター業界のリッチマンプアウーマン”と呼ばれている株式会社カブクの朝倉さんにお話を聞いてみます。カブク社は2回目の取材です。
前回の記事はふざけすぎて144箇所の訂正要望が出たために、今回は真面目に書いていきます。
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朝倉 雅文 プロフィール

株式会社カブク執行役員。みずほ銀行、リクルートキャリア海外経営企画、シンガポールで2社代表取締役社長を経てカブクに参画。 経営企画部にてファイナンス、事業戦略、アライアンス、人事、法務等管理部門全般を担当。

ちなみに、朝倉さんは、小栗旬出演のリッチマン、プアウーマンというドラマの副社長(左の人)っぽいと評判です。 名前も朝比奈なので、少し似てます。

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ものづくりのファイナンスについて

X人:朝倉さんは、以前はみずほ銀行にいて、今はカブクの執行役員として財務、経営企画、人事等、管理部門全般を担当しているんですよね。そこで今回、モノづくりにおけるファイナンスについてお話をお伺いしたいと思います。

個人的に、モノづくり系の会社ってなかなかファイナンス周りのニュースって少ないと感じるのですが、そこらへんはどういった見解でしょうか?

 

朝倉:そうですね。ITと違って、モノづくりが関わる場合のファイナンスはITのロジックがそのまま適用できるわけではないという観点では難しいですね。ものづくりはIT系、インターネット系ビジネスの様に、指数関数的にスケールし辛いという特徴があります。ただ、ものづくりの市場は日本でも100兆円を超え、世界的にも1,000兆円を超える非常に大きな市場が拡がっています。3Dプリンターにしても、物理的にモノを作っていくので、インターネットの広がり方とは、またちょっと違った部分があります。

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X人:なるほど。海外だと資金調達している会社がポツポツあるんですが、国内は本当に少なく感じます。

 

 

朝倉:それは、国ごとのスタートアップ投資市場規模の違いというのが前提としてあると思います。スタートアップ投資環境における資本の差だなと感じています。
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日本はものづくりに勝機が?

X人:そんな中、3Dプリンター事業者向けにファイナンスの面から話したい点はありますか?

 

朝倉:やっぱりファイナンス面でも盛り上がっていってくれたら良いなと思ってます。なぜかというと、日本はもちろん、アメリカやドイツをはじめ、世界的な大きなうねりが起き始めている第四次産業革命の文脈において欠かせない要素だと考えているからです。

インターネット 関連の分野では、先にGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)によって市場が占有されており、デファクトスタンダードになっています。しかし、第四次産業革命の要素でもあるインダストリアルIoT(産業向けIoT)の領域は、3Dプリンターを含めて日本やドイツが巻き返せるし、現場のものづくり力が強く、数多くのメーカーを有する日本が主導権を取る事を狙っていける領域だと考えています。

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X人:確かに、AIの領域ですと、WEBからのアクセスではGoogleに勝てないと思うんですが、インターフェイスがセンサーやモノだった場合、まだ参入余地はあると感じています。

 

朝倉:確かにGoogleにITテクノロジーのみで勝つ事は難しいでしょうね。情報を扱う基本的な技術のベースやインフラは、既にGoogleが相当投資をして開発しているので、そこにスタートアップが新規参入して結果を出すのはとても困難です。
それなら、人工知能に関してはIaaS領域(インフラ領域)PaaS領域で戦うのではなく、アプリケーションサイドで業界に特化した形で使っていくとか、そうした進め方をしないと難しいんじゃないかなと思います。
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X人:この半年くらいで大きなトピックスとして挙がった、JMC社の上場、アイジェット社のバイアウトについてはどのような見解をお持ちですか?

 

朝倉:非常に素晴らしいと思います。業界でファイナンスにおける実績ができたのは、大事なポイントだなと思います。3Dプリンター業界にはそれだけの力もあるし、今後が楽しみなところだなと思います。
あと、アイジェット社に関してはビックリしましたね。スタートアップは色んなイグジットの仕方があると思うんですが、分かりやすい二種類(IPO、バイアウト)の事例がで出来たことは業界からすると良いことかと思います。
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 3Dプリンターは個人よりも、まず法人

X人:今後伸びそうな分野はどこだと考えていますか?機種メーカー、3Dデータ配信、3Dプリントサービスビューローなどあると思いますが。

 

朝倉:領域としては、BtoB(対法人)のところが、これから強くなってくるかなと思います。
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X人:個人よりも法人ですか?

朝倉:個人は時間がかかると思います。潜在的な顧客ニーズはShapewaysを見ていても、やはりまだ時間が少しかかると思います。

何事も順番があると思っています。プリンターもパソコンも、最初は国が支援して、大企業がIBMのスーパーコンピューターみたいなのを導入して、それを中小の会社も使うようになってきて、それから個人用にパーソナルコンピューターも出てきて普及してきた流れがあります。その過去の潮流を見ても、民間サイドから個人に流れると思います。

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X人:確かに家庭用で儲かっている会社は少ない印象ですね。

 

朝倉:でも、パラダイムシフトが変わる可能性は十分ありますね。半年から1年で大きくなるのも、十分ありえる話だと思います。
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X人:なるほど、個人のマーケットプレイスという面で、RinkakとShapewaysとの住み分けってどんなところでしょう?

 

朝倉:Shapewaysは欧米系ユーザーの方が多く、日本語対応していないので日本ユーザーが少ない、カブクのRinkak marketplaceは、日本を中心とするアジア圏のユーザーの方に多くご利用頂いております

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2社の代表取締役社長を経てカブク社に

X人:今更なんですが、朝倉さんの自己紹介をいただけますでしょうか?通常の取材のセオリーを無視した流れなんですが。

 

朝倉:はい。仕事のキャリアでは、最初はみずほ銀行に新卒で入行し法人融資を担当しておりました。入行理由は経営における人、物、金における金の側面を抑えておきたいと考えた次第です。また、当時総資産世界第一位であり、シンプルに世界レベルの環境で働きたいという考えもありました。

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朝倉:そこからリクルートのHR部門であるリクルートエイブリック(現リクルートキャリア)でリクルーティングアドバイザー、キャリアアドバイザーを担当し、システム部門、経営企画部、グローバル経営企画で、シンガポール、中国・インド・ベトナム等、東南アジアを中心にサンフランシスコの会社からのシステムの導入でボストン、ニューヨーク等、グローバルでのプロジェクトマネジメントを担当しておりました。

リクルートキャリア卒業後はシンガポールで2社代表取締役社長を経験。インドネシア、タイの法人設立や中国でのM&Aに関わり、スペイン・アイルランド・中国・インド・ミャンマー・フィリピン・マレーシア・シンガポールのメンバーと働きました。

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朝倉:その後、カブクに参画し現在に至ります。カブクでも採用に関しては私が入社してからエストニア、スウェーデン、ドイツ、アメリカ、中国等、世界中の優秀な人材を採用しております。

カブク社に入った経緯

X人:なんでカブク社にしたんですか?

 

朝倉:僕の場合、大手企業、ベンチャー企業、起業を経験してますので、「1:マーケットポテンシャルがある 2:優秀なエンジニアが揃っている 3:投資できるキャッシュがある」という観点で、スタートアップに参画したいと考えました。カブクは3Dプリンター領域というマーケットポテンシャルがあり、CTOの足立をはじめとした優秀なエンジニアが揃っており、2015年時点にて、7.5億の調達を行っており投資できるキャッシュがありました。 当時ニューヨーク、シンガポールでの経営陣、もしくは起業というオプションがありましたが、カブクを選びました。
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X人:なるほど。

 

朝倉:他にも色々あるんですが、1番の決め手となった理由は「人」ですね。ウマが合ったのが大きいです。

 

X人:それは経営層ですか?

 

朝倉:いえ、全員です。昔のカブクは全員が面接して、代表と社員全員からOKをもらわないと入社できないという制度がありました。

 

X人:へー、すごい!

 

朝倉:社員のレベルも極めて高く、優秀な人材と働けることは働き甲斐の一つです。
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X人:朝倉さんは、最近、執行役員に就任しましたが、主な仕事は何をやっているんですか?

朝倉:基本的に職掌にとらわれず、ステークホルダーである株主、顧客、従業員に貢献できる事はなんでもやっています。 カブクはエンジニアサイド、ビジネスサイド共にタレントが揃っているので、中にいるタレントが、いかに気持ちよく活躍できる環境を整えるのかが経営の要諦かと思っています。

経営企画部としては中長期事業戦略の策定、年次、月次決算から、人事制度設計や法務、総務、マーケティング等幅広く対応しておりますが、そういった様々な方面から現場をサポートしていくことで、より事業を伸ばしていく感じです。

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朝倉:また、私は2016年12月まではRinkak marketplaceや海外事業を担当しておりましたが、2017年1月のタイミングでメンバーに引き継いでおります。新しい事業や部署を創り出し、次にメンバーを育て上げ引き継いでいき、自分は次の新しい仕事を創り出すというスタンスでカブクの仕事に取り組んでおります。あと、備品の発注が得意です。

 

X人:代表の稲田さんの悪口ってありますか?

朝倉:いや、本当にないですね。強いていうなら、経営は基本ボトムアップ型なんですが、もう少しトップダウンでもいいと思います。そのぐらい、田は従業員主体で考えており、さらに実践している為メンバーにとっては本当に働きやすい代表取締役です。カブクがここまで伸びてきたのは、ひとえに代表の稲田の人徳とビジョンあってこそだと感じております。f:id:osic:20170120205234j:plain

 

カブク社の採用基準は?

X人:人事面で採用の基準はなんでしょう?

 

朝倉:まず「ものづくりの民主化」というビジョンに対して共感してくれることが、前提条件です。そして、「徳と才」の観点でいえば、「徳のある方」ですね。スキルや経験があるだけではなく、人としての徳を大事にしています。 あと、スタートアップでやっていきたいという人じゃないと難しいと思います。
大手企業や安定している環境で仕事をしていきたいいうようなマインドセットの人は合わないんじゃないかなと。 最後は、スタートアップとして大きな山を登っていく為に、個別最適ではなく全体最適で考えることが出来るかですね。
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X人:好きな会社はありますか?

 

朝倉:個人的に、イーロン・マスクのマーケットをデカくしていく事業が好きです。

X人:稲田さんもイーロン・マスクを推していましたね!

朝倉:あと、テラモーターズの徳重社長僕は非常に意識しています。ハードウェアスタートアップとして日本を代表する一社だと感じてます。シリコンバレーでの経験がある中、インターネットでなく、EV(電動バイク)のようなハード寄りにいくところが凄いです。今はドローン事業をやっていて、ハードの領域をスタートアップで且つガチンコでやっているのは本当に凄いと思います。

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隠れX人の株式会社ファン?

X人:3Dプリンター関係で国内外の面白い会社はありますか?

 

朝倉:はい、ありますね。

 

X人:どこでしょう?

 

朝倉:僕が非常に注目をしているのは、X人の株式会社ですね。

 

X人:ありがとうございます。それは、「後でご飯を奢ってほしい」という意味でしょうか?笑

 

朝倉:いや、本当に注目していますね。DMM社は、アイジェット社も買収して今後は違う戦い方をすると思いますし、飛びぬけた営業利益があるというレベルでの戦いです。そんな中、X人はゼロから立ち上げて、新しい領域にどんどん挑戦されている点でとても注目しています。本当にベンチャー企業の戦いをしているのでいいですね。あとは最近ホームページもきれいになりましたし。
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マーケットを大きくしたい!

X人:最後に一言お願いできますか?

 

朝倉:業界の様子を踏まえて考える時に、VRやドローンのようなところもそうなんですが、1社がどうこうという話でなく、全員がいい意味で競争したり、マーケットを大きくしていきたいというところが非常に大切だと考えています。
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やはり成熟していない市場なので、市場を認知してもらうのが先かと思います。マーケットが認知されると、それが後からスタンダードなカタチになります。

この考え方は自分の経験が元になっています。以前リクルートキャリアにいた時に、転職市場における第二新卒のマーケットの立ち上げを行いました。当時、20代の転職は普及しておらず、「早期の転職は、けしからん!」のような暗黙の風潮がありました。

しかし、リクルートグループには、ヒトの生き方とか人生のオプションは沢山あって然るべきという考えがありました。そして、第二新卒というマーケットを大きくしていった結果、現在、人材業界はものすごく盛り上がってきたと感じております。

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3Dプリンター業界もまだまだ黎明期なので、啓蒙活動を行って広げていきたいと思います。これからは、コンビニに行くと3Dプリンターが常備されてあって印刷できるというように、コピーを取ったりPDF化したりする感覚で3Dプリントができればいいですね。
なので、業界を盛り上げていくのが先決かと思います。正確には、モノづくりの民主化に向けて業界を盛り上げ続けていきたいですね。

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インタビューまとめ

  • モノづくりが関わると、ムーアの法則がインターネット業界のようには適用しないのでスケールの仕方が新しい
  • 日本のスタートアップのマーケットはアメリカや中国と比較するとまだ小さいので大きくしていきたい
  • 3Dプリンターは個人よりもまず法人への流れがくる
  • カブクにはグローバルなタレントが揃っている
  • マーケットを大きくするには、まず認知が優先
  • 業界は、いい意味での競争が大事

最後に

朝倉さんからは、okuyukiのようなイケイケ感を感じました。

執行役員にもなられて、今後のカブク社での活躍に期待です。カブク社は、採用活動にも力を入れているので、「われこそは!」という方は是非朝倉さんまで連絡してみてください。

今回インタビューのために朝倉さんにもお越しいただいたのは浜松町のSTLオフィス。今年の1月をもって「DMM.make 3D PRINT TOKYO Factory」になりました。

引き続き、取材企画はダラダラと続けていきます。オフィス見学もお気軽にお越しください。

 

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おまけ

朝倉さんがシンガポールで、勉強になったのは、居酒屋で出されたレモンをかける時の気配りだそうです。

勝手にレモンをかけて怒られ、個人ではなく全体最適を優先させることの大切さを学んだとのこと。今は全員の同意を確認してからレモンをかけるそうです。

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マイケル・サンデルの正義の考え方みたいですね。
色々と非常に面白い話を聞けました!朝倉さん、取材のご取材ありがとうございました。

そんなカブク社に次ぐスタートアップは?

世界中の3Dプリンターをつないでいるカブク社ですが、世界中のタクシーや配車をつないでいる「UBER」というサービスはご存知でしょうか?

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カブク社と同じ、大きな注目を集めている有名なスタートアップ企業です。「UBER」は、最寄りのタクシーや配車をアプリをタップするだけで簡単に呼ぶことができます。
そんな「UBER」ですが、最近は「UBER EATS」という事業を展開。こちらは、アプリ内で近くの飲食店の注文をすると、指定先の住所まで届けてくれる非常に画期的なサービスです。
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和洋中に寿司やピザなど、豊富なメニューを注文でき、遠い飲食店の食事を気軽に食べることができます!  f:id:osic:20170203165241p:plain

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■画像参照元
http://aniwota-blog12.blog.so-net.ne.jp/2014-06-15-2


画像の説明文 <運営元情報>
株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。


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株式会社メルタの代表。 1991年生まれ。高校・大学とボクシングのサンドバックに打ち込み、新卒で入ったベンチャーが半年で倒産し、未経験の3Dプリンター業界で起業。 創業当初は「3人の株式会社」という社名にして怒られていました。目新しいサービスが好きです。