「3Dプリンタは俺のヨメ!?」MAKERSの世界を実現した男/西村大 独占インタビュー

3Dプリンター事業者に話を聞こうシリーズ

東京・浜松町にある3Dプリンター事業者に特化したコワーキングスペース「STL

本ブログは、STLのオフィスに3Dプリンター界隈の事業者を呼び、裏話を根掘り葉掘り聞いたり、茶化したりする企画です。

第四回は、沖縄ミライファクトリーで活動されている西村大さんに来て頂きました。3Dプリンター界隈では「メイカームーブメントの申し子」と名高い西村さん。今回はなんと独占取材の許可をいだきました。

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西村 大  プロフィール

STARTUP CAFE KOZA、オキナワミライファクトリー管理人

レーザーカッター、3Dプリンター、その他FABツールに関する事全部

ニコニコ技術部員、だいたい何でも作れる。

会社サイト:STARTUP CAFE KOZA(http://startup-cafe.okinawa/)

個人での最近のヒット、 全力で魔理沙の八卦炉を作ってみた https://youtu.be/7fInxWB4cLM

 

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スタート

X人の株式会社(以下、X人):お願いしますー。今回のオフィスグリコのチョイスはこちらです。

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西村大さん(以下、西村):特にお菓子はいらないんですが、このオフィスグリコの流れは必要なんですか?

X人:STLのオフィスグリコの良さを広めるためにも必要なんです。飽くまで、STLオフィスの良さを伝える広報記事ですので。

西村:なるほど。

X人:あと申し訳ないのですが、今日に限って仕事が忙しいため、僕はメールを打ちながらでの取材です。代わりに、僕の師匠である吉田賢造さんにサポート役として同席して頂きました。

西村:師匠、便利だなー。

 

▼左が、師匠の吉田さん、右が西村さん。お互いDMM時代からの付き合い。

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DMMで人買いにあった

X人:以前、西村さんはDMM.makeの前身であるDMM.3Dプリントにいたんですよね。まずDMMに入った経緯について詳しくお聞かせ頂けますでしょうか?

西村:簡単に言うと、人買いに合いました。

X人:人買い?笑

人買 – Wikipedia

人買(ひとかい)は、人身を買い取り、転売して利を得ること、またその商人のこと。人勾引(ひとかどい)ともいう。

関連項目

人身売買

売春

ポルトガル人による日本人などのアジア人の奴隷貿易

西村:DMMの前職は、WEBクリエイターです。デザインからコーディングまで一通り全部できます。そこで個人で3Dプリンターを触っていたところ、知人からDMM.3Dプリントの偉い人を紹介されて、立ち上げに参画した感じです。人買いの細かな話は載せられないので省きます。

X人:なるほど。語弊があるかもしれませんが人買いにあったんですね。 では、そんな西村さんが沖縄に移った理由はなんですか?

西村:自分のやりたいことができそうだったからです。僕は基本的に場所にこだわらないんですね。悪く言えば、そんなに地元愛がない。

吉田:西村さんは、ずっと前からノマドを推奨していましたね。

西村:同じ仕事をして生活費が半分だったら、沖縄のような自由な場所がいいかなーと。あと、沖縄は製造機材が有り余っている状態だから、機材を安く使えるという利点があります。

▼現在、沖縄のコワーキングスペースで、メイカーの製品開発のサポート活動に従事。

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吉田:他にも沖縄の起業率はトップクラスで高い。やってみよう文化が根付いているから相性はいいかも。

X人:なるほど、沖縄での3Dプリンターの活用事例とかはどうなんですか?

西村:話の組み立てを3Dプリンター主体にするとややこしくなるんですが、製造周り全般で僕らはサポートしているので、3Dプリンターはオマケみたいなものです。実は、1番使われているのはレーザーカッターです。

X人:あれ、そんな感じなんですね。

西村:3Dプリンターを進んでやる人は結構少ないです。地元民に3Dプリンターをイチから教えてビジネスを作らせるというのは恐ろしくハードル高いんですね。

それなら、東京でビジネスを作って、沖縄で受注生産して、雇用して、そこで出た利益は全て現地の人に還元するようにしています。そこにすごく未来があります。

X人:今、沖縄にそんな動きがあるとは。

西村:沖縄は色んな意味でアツいんですよ。

X人:ちなみに、お互いDMM出身ということですが、DMMの亀山会長について語ってもらえませんか?

吉田:それに関しては、何も言えません。

西村:知りません。

 

▼西村さんが愛用しているメーカーボットReplicator 2。

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「MAKERS」の本は間違えてなかった。

吉田:そういえば、最近「MAKERS」の本を読み直したんだけど、あの内容は間違えてないというのを思った。3年前とかに誰かが書いた3Dプリンターの考察の記事などを読んでも、全く否定できないし。昔に描かれていたMAKERSの未来はきてないけど、それを否定する材料は特にないのね。

西村:それは全く間違ってないですね。間違っているのは機械と効率の方かと。造形物をキレイに出せる機械がなくて、なおかつ時間貸しのビジネスが多いというところが大きな問題です。1つのモデルを造形するのに1時間で終わるわけがないのに、1時間単位でお金が取られることに違和感があります。

X人:そこなんですね。

西村:知り合いで3Dプリンターを触りたいという人がいて、どれ買えばいいの?って言われても勧められる機種がないし、レンタルで使ってみても目が飛び出るほど高い。

X人:ちなみに、5人の株式会社でも3Dプリンターを購入したいと思うのですが、あるものでオススメの機種はありますか?

西村:あるものだと、afiniaがいいかなー。サードパーティのフィラメントも使えますし。あと、ソフトウェアが頻繁に更新されるやつは信頼できますよ。

X人:なるほど。

西村:やっぱり、メイカームーブメントが起きない原因は、人に勧められる機種がないところじゃないですか。唯一勧めることができたメーカーボットReplicar2が生産中止で売り切れていることが悲しい。3Dプリンターを見るファクトって“値段”“使いやすさ”に集約されるんだけど、今のところ高水準の機種がないというね。今、メーカーの景気のいい話も聞かないし、3Dプリンターは「迷走期」かもしれません。

吉田:その例えは新しいですね。

X人:話は変わりまして、吉田さんと西村さんはどちらがモテるんですか?

吉田:それは残念ながら西村さんです。

 

 

▼afiniaと西村さん。よく見ると3Dayプリンターのロゴを貼ってくれてます。f:id:osic:20160908163538j:plain

▼5人の株式会社も今年の夏に沖縄のミライファクトリーに遊びに行きました。

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3Dプリンターは電子レンジの過去に似ている

X人:なるほどです。少し話を逸して、コンテンツ論について聞いてみたいです。

西村:コンテンツに関しては、“鶏が先か、卵が先か?”みたいな感じで水掛け論になるかと思うんですよね。

よく3Dプリンター談義で、2Dプリンターとの比喩はありますよね。日本は、年賀状というキラーコンテンツがあったから2Dプリンターが普及したという例えはよく使われています。

でも、米国で年賀状の文化は全くないけど2Dプリンターは流行っているので、そのロジックは成り立たないんです。まぁ百歩譲ってクリスマスカードとかはあるかもしれないけど、韓国や中国でも2Dプリンターは流行っているから、2Dプリンターとコンテンツはあまり関係ないんじゃないかと。

そんな感じで2Dプリンターだと屁理屈や反論がたくさん出てくるので、今回は電子レンジで例えます。

X人:電子レンジの例えは、初めて聞きました!笑

西村:電子レンジで例えるなら、昔の電子レンジは50万円くらいして、味噌汁を温められますよーってくらいのことしかできなかった。オマケにタイマー機能も付いていない。味噌汁を温められますよって言っても、自宅の鍋でいいじゃん!と反論されて終わりみたいな。

X人:その例えは面白いですね。吉田さんはどう思いますか?

吉田:ちょうどコイキングを博士に送って飴玉に変えてた。

西村:まぁ話を続けます。前に何かの記事で見たんですが、電子レンジは当初メーカーがめっちゃ苦労したみたいです。車に電子レンジを乗せて、主婦がいるイベントやスーパーに出向いて営業するのを続けたそうです。

実演デモとか、買った人には抽選で何人かハワイ旅行プレゼント!みたいな企画とか、何年も続けていたらしいです。3Dプリンターが流行るには、コンテンツ云々じゃなくて、そういった地道な努力じゃないですか。

なので、俺から言わせると、コンテンツ云々でガタガタ言ってんじゃねえよ!っていう感じはあります。

▼昔の電子レンジ。3Dプリンターも電子レンジと同じようにいずれ価格が下がる(だろう)

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画像参照:古い三菱の電子レンジ 二十数年前

 

メーカーボット擬人化計画

X人:ちなみに西村さんは、3Dプリンターを2,000時間回したとか、個人で数十万円の機材を何台か買ったみたいな話がありますが、他に変態チックなエピソードはないんですか?

西村:なにかあるかな?

吉田:メーカーボット社に行った時に、メーカーボットの擬人化の話を持ち込みさせられたのは印象的やった。片言の英語で交渉してた。

X人:実際に実現して、一部の間で話題になってましたね。

 

▼噂のメーカーボット擬人化。女の子のメイ・カーボットとウサギのポータJr。

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MakerBot Life 始めました! | Makerbot Life

▼西村さんのFacebookアイコン。この画用紙を掲げてメーカーボットの擬人化の話を仕掛けたそう。

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▼あと、以前に西村さんは、3Dプリンターを持ち運びできるリュックを社内で導入しようと言ってました。

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3Dプリンターを持って外に出よう!3Dプリンターを運べる専用のリュックが登場。

 

日本は、ものづくり信仰が強すぎる

吉田:ちなみに、西村さんから見て、メイカームーブメントのような時代はくるんですか?

西村:くる!!

吉田:くるんですね。

西村:きます!多くの人がメイカーになりえると思っています。でも日本だと、ものづくり信仰がありすぎて期待値が高くなっている気がするんですよ。ものづくり大国であるがゆえに。これは日本のモノづくり信仰のよくないところです。

X人:なるほど。

西村:昔はともかく、今のものづくりに携わっている人は99.9%はサラリーマンですよ。そもそも、本当にものづくりがしたいわけでなくて、飯食うためにものづくりをしている訳です。だから土日にものづくりする人はいない。

吉田:うーん、確かに。そもそも日本はものづくり国家なのかという?

西村:自動車くらいかも。

吉田:大企業が自動車ばかりなのも問題かも。自動車産業がデカすぎて、他の産業が育ちにくい国なのかもしれない。誰かがロケットやろうと言っても、優秀な人は自動車関連の会社に行くし、国も自動車以外の産業を積極的に支援しないから、人材が行き渡らないのね。

西村:そうですね。海外の場合は少し違ってて、例えば米国は母数が大きすぎるから一定数のメイカーが保たれてるし、東南アジアなら一攫千金を狙って変なことする奴がいる。日本は裕福で、かつ母数がすくないから、そういったメイカーはあまりいないんじゃないですか?f:id:osic:20160908163352j:plain

 

これからは、1人が幾つもの仕事を掛け持ちするようになる?

吉田:そもそも日本人は、ものづくりの素養はあるの?

西村:ありますよ。さっきの話に戻ると、ものづくり信仰を鵜呑みにするほど多くはないけど、絶望するほど少なくない。

吉田:なるほど。あと、メイカームーブメントによって生まれる人は2種類あると思う。1つは大企業を倒そうとするメイカーと、2つは西村さんみたいな草の根メイカー。ものづくりで勝負するというよりも趣味や自己実現のひとつとしてもメイク活動をしている人とか。2つ目の草の根メイカーは、今後増える印象はあるなーと。

西村:それを言うとメイカーズの本よりもワークシフトの世界観が当てはまるんじゃないかな。自由に暮らすようなメイカーが出てきたりする。

あと、本業が1つという社会の風潮はなくなると思う。初音ミクで音楽つくったり、YouTubeやニコニコ動画でお金を稼ぐみたいな人は今後増えてくるんじゃない?

吉田:確かに。

西村:今後、3Dプリンターの費用が安くなりインフラコストが下がって、投資として回収できるようになれば、3Dプリンターで稼ごうという人は多くなると思う。

ですが!今はそれを実現するには、機種の精度が追いついていないし、気軽に3Dプリンターを使える施設が少ない。というのが問題なんです。なので、沖縄ミライファクトリーをつくったんです。

吉田:東京とか、各地に色んなメイク施設があるじゃない?

西村:あるけど。俺から言わせると、正直、運営側があまり利用者の気持ちを分かってないとも思うんですよ。そもそも1時間単位での時間貸しというのはベストな選択じゃないし。ハードもソフトも使い方も全部わかっている人がいないと、あまり施設としての意味がないかと思う。

吉田:ちょっとビールが欲しくなってきた。

西村:なので、それを沖縄の未来ファクトリーで再現しようと思っています。

X人:(メールを打っている間に、めっちゃ話が盛り上がってる。)

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X人:長く喋りましたね。遅くなったのでSTLオフィス前の川辺で話しましょう。最後に、3Dプリンターの魅力についてお願いします。

西村:自身でものづくりをしたいという時に、ピンポイントで当てはまったのが3Dプリンターでした。僕からすると、単純に効率のいい製造機器だったんですよ。先にレーザーカッターが出ていたら、そっちを使っていたと思う。

X人:効率的な製造手段として3Dプリンターが当てはまったのですね。

西村:僕は、よく働く機器が好きです。

吉田:西村さんは、簡単に言うとギークなんですよ。

X人:なるほど。あと、折角なので川辺に向かって2人で仲良く”立ちション”をしてもらえませんか?

吉田:微妙な無茶振りだなー!フリだけなら。

西村:師匠に立ちションを求める弟子ってなんなの?

X人:とりあえず、飲みに行きますか。

 

▼その後、会社メンバーと知人を交えて飲みに行きました!

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インタビューまとめ

  • DMMでは人買いにあった
  • 家庭用だとメーカーボットReplicator 2とAFINIAがオススメ
  • メイカームーブメントの凋落は、機種の性能の問題と機材を借りられるサービスが少ないこと
  • 沖縄でその場所を作ろうとしている
  • 本業が1つという時代はなくなる
  • 3Dプリンターと電子レンジは似ている
  • コンテンツの普及は、さほど問題ではない
  • MAKERSの本の内容は間違えていない
  • 師匠に立ちションを求めるのは駄目(フリならOK)

 

最後に

何年も3Dプリンターを触っている西村さんからは、まるで家庭用3Dプリンター「Makerbot」のような高精度な思考を感じました。

こんな貴重な話を聞けるのは浜松町のSTLオフィス。引き続き会員も募集しています。オフィス見学などにもお気軽にお越しください。

 

ミライファクトリーについて

また、西村さんが運営に携わっている沖縄のミライファクトリーはこちらから↓↓

startup-cafe.okinawa

FAB会員で月額5,000円で3Dプリンターやレーザーカッターが使い放題。

メイカーからすると最高の施設です!沖縄の方は、ぜひ使ってみてください。

 

<取材後>

X人:取材の御礼として、3Dayプリンター オリジナルステッカーを差し上げます。是非手持ちのPCに貼ってください。

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西村:デカすぎませんか?

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(完)


画像の説明文 <運営元情報>
株式会社メルタは、3D事業に特化した会社です。
3Dデータ作成のモデリーや、3Dプリントの3Dayプリンターなどのサービスを運営しています。ライターの仕事も受け付けます。